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税務調査に必要な書類とは?調査当日の流れや書類の保存ルールも徹底解説

必要書類

税務調査は企業経営者や個人事業主にとって避けては通れない場面であり、どのような書類が求められ、どう対応すればよいかを正しく知っておくことが重要です。突然の調査通知に慌てないためにも、事前に必要な帳簿や台帳の準備、保存方法、調査当日の流れなどを理解しておく必要があります。

ここでは、税務調査で確認される主な書類やその整理方法に加え、対象となりやすいケースやよくある質問についても詳しく解説していきます。記事を読むことで、適切な準備と対応方法が明確になり、安心して税務調査に臨めるようになるはずです。

税務調査の基本

税務調査は、税務署が納税者の申告内容を確認するために行う重要な手続きです。

ここでは、そもそも税務調査がなぜ実施されるのか、そしてその種類にはどのようなものがあるのかを詳しく解説します。調査の背景を正しく理解することが、適切な対応への第一歩となります。

税務調査の目的

税務調査は、納税者が提出した申告書の内容が正しいかどうかを確認するために実施されます。税務署は毎年、申告内容に疑問点がある企業や個人を選定し調査を行っています。

調査の主な目的は、以下の通りです。

  • 適正な税額が申告されているかを確認する
  • 隠された所得や過少申告がないかを明らかにする
  • 税務上の不備や誤りを指摘し、是正させる

正確な帳簿や書類を整備し、日頃から整理しておくことで、税務調査時に指摘されるリスクを軽減することができます。特に、現金取引の多い事業者や売上・経費の変動が大きい場合は、調査対象になりやすい傾向があるため注意が必要です。

任意調査と強制調査の違い

税務調査には大きく分けて「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。それぞれの調査には目的と手続きに明確な違いがあります。

項目任意調査強制調査
実施主体税務署(国税局)国税局の査察部(マルサ)
通知の有無原則事前通知がある通知なし(抜き打ち)
法的強制力原則、協力を求める捜索・差押えなど法的強制力がある
対象一般の法人・個人事業主悪質な脱税が疑われる事案
調査目的申告内容の確認・是正犯罪の立証・刑事告発

中小企業や個人事業主に対しては、ほとんどが任意調査で行われます。ただし、税務署の調査に非協力的な姿勢をとると、強制調査に発展するリスクもあります。そのため、日頃から誠実な経理管理と書類の整備を心がけることが重要です。

税務調査が入るタイミングと対象になりやすいケース

税務調査は突然やってくるように思えますが、実際には税務署が慎重に情報を収集し、調査の必要性があると判断したうえで実施されます。

ここでは、どのようなタイミングで税務調査が入りやすいのか、また法人や個人事業主が調査対象となる共通点について解説します。日頃の業務を見直すきっかけにもなる内容です。

調査対象になりやすい法人の共通点

税務調査はすべての法人に等しく行われるわけではなく、一定の特徴を持った法人が優先的に対象となる傾向があります。以下のような共通点がある法人は、特に注意が必要です。

  • 売上に対して利益率が極端に低い、またはマイナスが続いている
  • 売上や仕入の金額が大きく変動している
  • 現金取引の割合が高く、帳簿との整合性が取りにくい
  • 関連会社や同族会社との取引が不自然
  • 過去に税務調査で指摘を受けたことがある

また、長期間税務調査が行われていない法人も対象となりやすいです。これは、数年間にわたる申告の精査が必要とされるためです。加えて、税務署が第三者からの情報提供やマイナンバー制度を通じて異常を察知した場合も、調査対象に含まれます。

調査対象になりやすい個人事業主の共通点

個人事業主もまた、特定の条件を満たすと税務調査の対象になりやすくなります。法人と同様、所得と支出のバランスや記帳の信頼性が重視されます。

  • 所得に対して生活費や支出が明らかに乖離している
  • 申告している所得が極端に少ない
  • 現金収入が多い業種(飲食業、美容業、小売業など)
  • 急激に売上が増加している
  • インターネット取引やフリマアプリなど副業収入があるが申告がない

また、税務署は第三者からの通報や情報提供を受けて調査に踏み切ることもあります。例えば、元従業員や取引先などから申告漏れを指摘されるケースです。これらの情報は調査のきっかけとなるため、常に透明性のある経営が求められます。

税務調査の基本の流れと対応方法

税務調査が決定すると、一定の手順に沿って調査が進んでいきます。

ここでは、税務調査の事前通知から当日のやり取り、調査後の対応まで一連の流れを段階ごとに解説します。全体像を理解しておくことで、慌てず冷静に対応できるようにしておきましょう。

事前通知と日程調整の流れ

税務調査のほとんどは、税務署からの事前通知に始まります。通知は基本的には電話で行われ、調査の目的や日程、調査官の人数などが伝えられます。基本的には「任意調査」として実施されるため、調査日程は納税者と相談のうえで調整されます。

事前通知で伝えられる内容は以下の通りです。

  • 調査対象の年度と税目(通常は過去3~5年)
  • 調査に来る調査官の氏名と所属
  • 調査予定日と日数
  • 必要となる書類の概要

この段階で税理士に相談し、調査の立ち会いを依頼することが推奨されます。調査内容によっては、弁護士や会計士など他の専門家と連携することも視野に入れると良いでしょう。

調査当日の進行と確認されるポイント

調査当日は、事前に指定された帳簿や書類が揃っているかの確認を受けることから始まります。その後、調査官が実際に書類を精査しながら、疑問点について質問を行います。

調査で確認される主なポイントは以下の通りです。

  • 売上や仕入、経費の整合性
  • 現金出納帳と預金通帳の突合
  • 請求書・領収書と帳簿の一致
  • 契約書や取引先との関係
  • 給与の支払い状況と源泉徴収の処理

また、実地調査の場合には、実際の店舗や事務所の状況も確認されることがあります。現場の様子、在庫の状況、従業員の数などがチェックされます。

調査後の指摘と対応方法

調査が終了すると、調査官から口頭で指摘事項の説明が行われた後、調査結果の説明があります。その内容に基づき、後日、納税者から「修正申告」を行うか、税務署から更正決定等の処分が行われます。

調査後の対応で大切なのは以下の3点です。

  • 指摘内容を正確に理解する
  • 必要があれば税理士と相談し、異議申立てや修正申告を行う
  • 同様のミスを繰り返さないための再発防止策を講じる

調査の指摘内容によっては、追加納税や加算税、延滞税などの負担が発生します。納得できない場合には、審査請求など法的手続きを選択することも可能です。

税務調査で確認される主な書類と準備のポイント

税務調査では、帳簿や取引に関する書類を中心に多岐にわたる資料が確認されます。ここでは、調査対象としてよく挙げられる書類の種類と、それぞれの整理・保存のポイントについて解説します。調査官が注目する視点を知ることで、事前に適切な準備が可能になります。

基本的な帳簿や台帳

調査で必ず求められるのが、総勘定元帳や現金出納帳、仕訳帳などの基本的な帳簿類です。これらは、財務状況を把握する基礎資料として重視されます。

準備すべき代表的な帳簿は以下の通りです。

  • 総勘定元帳
  • 現金出納帳
  • 仕訳帳
  • 補助元帳(売掛帳・買掛帳など)
  • 試算表および決算書一式

これらの帳簿は、会計ソフトで出力したものでも問題ありませんが、訂正履歴が確認できる形式が望ましいです。特に現金出納帳は現金取引の多い業種において厳しくチェックされやすいため、記録漏れや誤記に注意が必要です。

売上・経費に関する書類

売上や経費の実態を確認するためには、請求書や領収書、見積書、契約書などの書類の整合性が重視されます。税務署は、これらが帳簿と一致しているかどうかを細かく確認します。

確認対象となる主な書類

  • 請求書・納品書・領収書
  • 契約書・取引基本契約書
  • 見積書や発注書
  • レシートなどの細かい経費証憑

特に経費関連の書類は、業務との関連性が説明できるものを保存することが重要です。たとえば、接待交際費であれば、相手先や目的が記載されているメモなどがあると説得力が増します。

給与や人件費関連の書類

人件費に関する支出も、源泉徴収などの処理が正しく行われているかを確認する対象となります。特に給与支払に関する書類は、従業員の人数や支給内容との整合性が求められます。

主な確認書類

  • 給与台帳・源泉徴収簿
  • 賃金台帳・勤怠記録
  • 雇用契約書
  • 支払調書・年末調整関係書類

勤務実態が無いにもかかわらず給与を支払っている場合などは、調査で指摘を受ける可能性があります。副業社員や業務委託契約者などの支払についても、詳細な資料の保存が求められます。

資産・在庫管理のための書類

固定資産や在庫の管理状況についても、税務調査で注目されるポイントです。減価償却の適用が適正かどうか、実際の棚卸の記録と帳簿の整合性があるかどうかが確認されます。

必要となる書類の例

  • 固定資産台帳・減価償却計算書
  • 棚卸表・在庫管理台帳
  • 購入・取得時の契約書や請求書

棚卸表には実施日や担当者の記録も含めると信頼性が高まります。また、不要資産や除却済みの資産が台帳に残っていないかも見直しておくと良いでしょう。

書類整理と保存ルールのポイント

税務調査をスムーズに乗り切るには、必要書類を適切に保管し、すぐに取り出せるよう整理しておくことが欠かせません。

ここでは、紙書類と電子データの保存方法、また万が一書類を紛失した場合の対応と再発防止策について詳しく解説します。日頃の管理体制が、調査時の信頼にも直結するため、しっかり押さえておきましょう。

紙と電子データの保存のポイント

税務関連書類は法人・個人事業主を問わず、原則7年間の保存が義務づけられています。青色申告の承認を受けている場合や繰越欠損金があるケースでは、保存期間が最大10年に延びるため注意が必要です。

紙媒体は年度別や書類の種類別にファイリングし、保管場所を明確にしておくことが基本です。電子データは、基本的には電子帳簿保存法に沿って保存する必要があり、検索性の確保や改ざん防止措置が求められます。スキャンした領収書や請求書も、保存要件を満たしていなければ無効とされる可能性があるため、事前の確認が欠かせません。

また、クラウドサービスを活用する場合でも、バックアップの確保やアクセス権限の管理など、セキュリティ面の対策が重要です。

書類を紛失・破損した場合の対応と再発防止策

万が一、調査で必要な書類を紛失・破損してしまった場合は、状況を誠実に説明しつつ、可能な限りの再発行や再作成を行うことが望ましいです。対応としては、取引先や金融機関からのコピー取得を試みたりすることが挙げられます。原本がなくても、代わりになるデータや資料を提示できるよう準備しておくことが大切です。

再発防止のためには、日頃からの整理・点検を怠らないことが基本です。スキャン保存のルールを徹底し、保存用フォルダの構成を決めたり、チェックリストを導入したりすることで、ミスを防ぎやすくなります。必要に応じて税理士と相談しながら、自社に適した管理体制を整えていきましょう。

税務調査の必要書類に関するよくある質問

税務調査を控えた経営者や個人事業主からは、必要書類や調査時期、対応方法に関するさまざまな疑問が寄せられます。

ここでは、実際によくある質問を取り上げながら、それぞれに対してわかりやすく解説します。調査への不安を解消し、事前準備を確実に進める参考にしてください。

税務調査はいつごろ来ますか?決算期によって調査時期は変わる?

税務調査の時期は明確に決まっているわけではありませんが、決算月の3〜5カ月後にあたる時期が多いといわれています。たとえば、3月決算の法人であれば、調査が入るのは7月~9月ごろが一般的です。

これは、申告書の内容が税務署内で精査され、疑問点が浮かんだ場合に調査に着手するまでに一定の時間がかかるためです。また、税務署の繁忙期や職員の人員配置の都合も調査時期に影響します。

ただし、特定の情報提供や調査の必要性が高いと判断された場合は、時期を問わず抜き打ちで調査が行われるケースもあります

税務調査が10年以上来てないけど、どのくらいの頻度でくる?

税務調査の頻度は、業種や規模、過去の調査履歴などによって大きく異なります。一般的には、法人で3年~10年に1回ほど、個人事業主の場合は5年~10年に1回ほどの頻度で入ると言われています。過去に指摘が多かったり、申告内容に疑問点がある事業者は、3年おき程度で調査を受けることもあります

また、長期間調査が行われていない場合は、税務署も注目する傾向があり、「申告内容に不備や見落しが隠れている可能性がある」と考え、取引内容や帳簿の管理状況を精査することがあります。

長期間調査がなかったからといって油断せず、常に書類の整備や帳簿の記帳を怠らないよう心がけましょう。

どれくらいの金額になると税務署からチェックされやすくなる?

税務署は、金額の大きさそのものよりも、取引の内容や変動の不自然さに注目します。たとえば、売上や経費の急な増減、大口の現金取引、高額な資産購入が続いている場合などは、業種や規模に照らして不自然と判断されると調査対象になる可能性があります。

重要なのは、金額の多寡ではなく、取引内容の妥当性や説明の整合性です。帳簿や証憑をしっかり整えておくことが、調査リスクを下げるポイントとなります。

売上が少ない会社や個人事業主でも税務調査の対象になる?

売上規模が小さい会社や個人事業主であっても、申告内容に不自然さがあれば税務調査の対象となります。特に、現金取引が多い業種や、同一地域で同業他社と比べて著しく利益率などが異なる場合には注意が必要です。

また、副業収入やインターネット取引など、申告もれのケースが多い収入がある場合は、調査対象になりやすい傾向があります。税務署は、マイナンバー制度や各種データベースから多角的に情報を収集しており、小規模事業者でも見逃されない体制になっています。

税務調査で言ってはいけないことは?

税務調査では、事実と異なる発言や曖昧な回答がトラブルの原因になります。たとえ悪意がなくても、「記録していない」「覚えていない」などの無責任な発言や、「これは経費じゃないけど入れました」といった不用意な言動は、調査官の心証を悪くする可能性があります。

不明点がある場合は「確認して後日回答します」と伝え、その場で不用意な発言をしないことが重要です。税務調査では誠実な態度が最も信頼されるため、正確な記録と事実に基づいた説明が求められます。

まとめ

税務調査は中小企業や個人事業主にとって大きなプレッシャーとなりますが、必要な書類を事前に整理し、適切な対応を把握しておくことで、落ち着いて調査に臨むことができます。総勘定元帳や現金出納帳などの基本帳簿に加え、売上・経費・人件費・資産に関する各種書類を正しく保管しておくことが重要です。

また、調査対象になるタイミングや共通点を理解することで、日常的な帳簿管理にも意識が向くようになります。不安な点や判断に迷う場面があれば、税理士のサポートを受けることで、より万全な体制を築くことができます。

税理士法人GNsでは、税務調査が入ることになった企業や個人事業主の方、将来的なリスクを懸念する経営者の方に向けて、調査立会いや税務署対応、事前のアドバイスといったサービスを提供しています。安心して税務調査に臨むためにも、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。