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税務調査と聞くと帳簿や請求書をチェックされるイメージがありますが、最近ではスマホやLINEの中身まで確認されるケースがあることをご存知でしょうか。個人事業主や中小企業経営者の中には、プライベートと業務の区別が曖昧なスマホの扱いに不安を感じている方も少なくないのではないのでしょうか。
この記事では、税務調査においてスマホやLINEがどこまで見られるのか、そしてどんな場合にスマホを見せる必要があるのかを具体的に解説します。不安を解消し、万全の備えができるよう正しい知識を身につけましょう。
税務調査でスマホやLINEはどこまで見られる?
帳簿や請求書の確認が中心だった税務調査も、業務に関するやり取りがスマホ上で行われていればスマホやLINEなどのデータが対象となるケースが増えています。
ここでは、スマホやLINEが調査対象となる具体的な背景とどこまで見られる可能性があるのかを詳しく解説します。
基本は帳簿や領収書などの書類調査
税務調査の基本は、申告内容が正しいかどうかを帳簿や領収書、請求書、納品書、契約書などの原始資料をもとに確認することです。これらの書類から収益や費用の根拠を突き止めていきます。
しかし、帳簿に不審な点がある場合や書類からは判断がつかない取引については、さらに詳細な情報を求められることがあります。調査官は「質問検査権」という法的権限を持っており、その範囲内での調査に納税者は応じる「受忍義務」があるため帳簿だけでは情報が不足していると判断されれば、補足資料としてスマホのデータを求められることがあります。
業務に関係するスマホやLINEのデータも対象になる場合がある
最近では、取引先とのやり取りを電話やメールではなくLINEなどのメッセージアプリで行う事業者も増えています。例えば、見積書や請求書をLINEで送ったり商品の注文をスマホのメッセージで受けたりするようなケースです。
そうしたやり取りが帳簿に記載されている取引と関連している場合、調査官はその正当性を確認するために、LINEの履歴やスマホのデータの提示を求めることがあります。ただし、提示が求められるのはあくまで業務に関連する情報のみであり、プライベートなメッセージまで見せる必要はありません。
税務調査でスマホやLINEがチェックされるケースとは
スマホやLINEが実際に調査の対象となるのは、すべての税務調査においてではありません。ただし、業務に関するやり取りや取引履歴がスマホに記録されていると確認された場合には、調査官から提示を求められる可能性があります。
ここでは、どのような状況でスマホやLINEのチェックが求められるケースを詳しく解説します。
取引先とLINEやメッセージアプリで連絡を取っていた場合
営業や外出先でのやり取りに、LINEやメッセージアプリを使う事業者は多くいます。見積書の送付や発注確認などをLINEで行っていた場合、帳簿に記載された取引内容との整合性を調査官が確認するためメッセージ履歴や添付ファイルの提示を求められることがあります。取引の正当性や金額・日付を確認する目的で、スマホ内の会話記録が調査対象となることがあるのです。
請求書に日付がないなど、帳簿に不備がある場合
提出された帳簿や請求書に不備がある場合も、スマホのデータが確認される可能性があります。例えば、請求書に発行日が記載されていない場合、調査官はそのやり取りがいつ行われたものかをスマホのメッセージ履歴などから確認しようとします。
LINEやSMSには日時の記録が残るため、調査の裏付け資料として有効な証拠と見なされやすいのです。書面の不備を補完する目的でスマホの情報が使われるケースは年々増加しており、これを防ぐには書類の整備を徹底することが重要です。
パソコンを使わずスマホのみで業務を完結している場合
近年では、パソコンを使わずにすべての業務をスマホで完結している事業者も多く見られます。クラウド会計アプリやモバイル請求システムなどを使えば、スマホだけで請求書の発行から売上管理まで可能になるからです。
しかし、スマホが唯一の業務デバイスである場合、税務調査時にはその中の情報が重要な資料として扱われやすくなります。取引の履歴、送受信されたファイル、支払記録など、スマホの中に業務証拠が集約されている場合は、それらを調査官に提示するよう求められる可能性が高くなります。
税務調査でスマホやLINEのデータを提示するように言われたら?
スマホやLINEのデータを見せてほしいと調査官から言われた場合、どこまで対応すべきか判断に迷うこともあるでしょう。任意調査といえども法的な義務がある一方で、個人のプライバシーも守られるべきです。
ここでは、調査官からスマホやLINEのデータを提示するように言われた際の対応方法について解説します。
受忍義務の範囲を超える要求には適切に断る
任意調査であっても納税者には「受忍義務」があるため、調査官から求められた内容が税務調査に関係していれば基本的には応じなければなりません。
しかし、それはあくまで業務に関連する情報に限られます。調査官がプライベートなメッセージや個人的な写真まで見ようとするのは、受忍義務の範囲を超えており明確に断ることができます。スマホの中身を調査官に直接操作させる必要もありません。必要な業務データだけを選んで提示し、それ以外は見せなくても問題ありません。
税理士に立ち会ってもらうことでトラブルを防ぐ
スマホやLINEのデータを調査官に見せる際には、情報の扱い方を巡って誤解や行き違いが生じるリスクがあります。そのような事態を防ぐためには、税務調査の専門家である税理士に立ち会ってもらうことをおすすめします。
税理士は「質問検査権」や「受忍義務」の範囲について熟知しており、不当な要求には法的根拠に基づいて適切に対応できます。また、調査官とのやり取りも税理士が代わって対応してくれるため安心して調査に臨むことができます。
データ提示は必要最小限にとどめるのが基本
税務調査では調査官に求められた情報を必要な範囲で提示することが原則です。業務に関係のないプライベートな情報まで見せる必要はなく、スマホを丸ごと調査官に預ける必要もありません。
提示を求められた場合は、まず業務に関係するやり取りやデータを自分で確認し、その該当箇所のみを見せるようにしましょう。LINEの履歴であれば、該当期間や取引先とのやり取りに絞って提示することでプライバシーを守りながらも調査に協力できます。
税務調査でスマホを見られても困らないための準備と対策
スマホが税務調査の対象になると業務と関係ない情報まで見られてしまうのではと不安を感じる方も多いでしょう。あらかじめスマホの使い方や情報管理を見直しておくことで、不要なトラブルやストレスを回避できます。
ここでは、税務調査でスマホを見られるリスクを軽減するために日常的に実践できる対策を紹介します。
業務とプライベートのスマホを分けて使用する
スマホ1台に業務用とプライベートのデータが混在していると、調査官に業務データを提示する際にプライベートな内容も見られてしまうリスクがあります。
これを防ぐ最も確実な方法は業務専用スマホを用意し用途を明確に分けることです。業務連絡は業務用スマホで完結させ、プライベートな連絡は個人用スマホで行うようにすれば、調査時にも業務端末だけを提示すればよいため対応がスムーズになります。
スマホを2台持つのが難しい場合は、業務アプリやクラウドツールを導入しデータを分離管理する方法も検討できます。
業務データは整理しておき、必要な情報だけ提示できるようにする
LINEやチャットアプリを使った業務連絡は、調査時に証拠として提示を求められることがあります。あらかじめ業務と関係するやり取りを整理し、必要な情報をすぐに取り出せる状態にしておくことで、プライベートな情報を誤って見せるリスクを下げることができます。
定期的にやり取りの内容をバックアップし、取引ごとにフォルダ分けするなどの整理を行っておくことで、帳簿との整合性を示しやすくなり調査への対応もスムーズになります。
曖昧な取引や非公式な連絡は避けるように意識する
スマホやLINEでのやり取りは手軽である反面、内容が曖昧だったり、正式な書類を交わさずに取引を進めてしまうと後にトラブルの原因になります。税務調査においても、そうした非公式な連絡は証拠としての信頼性に欠け、逆に疑念を持たれる可能性があります。
業務連絡はできるだけメールや契約書で残すようにし、スマホでのやり取りは補足的な確認や進捗連絡にとどめておくのが望ましいです。記録を残す際は取引内容が第三者にも分かるよう明確にしておくことが大切です。
不安があれば早めに税理士に相談する
スマホの使い方や情報の取り扱いに不安がある場合は、早めに税務調査に詳しい税理士に相談しておくことをおすすめします。日常的な業務の進め方から、帳簿の整備、データの管理方法まで調査を見据えたアドバイスをもらうことで安心して経営に専念することができます。税務調査が入る前に相談しておけば、いざというときにも慌てずに対応できる体制が整います。
税理士法人GNsでは、税務調査に特化したサポートに強みを持ち、事前の準備から当日の立ち会い、調査後の対応まで状況に応じた的確なアドバイスとフォローが受けられます。初めて調査を受ける方や過去に指摘を受けた経験がある方にも心強い味方となるでしょう。
税務調査でスマホを見られることについてよくある質問
スマホやLINEのデータが調査対象になると聞くと、多くの方が疑問や不安を抱くものです。
ここでは、税務調査においてよくある質問とその回答を通じて知っておくべきポイントを解説します。調査への理解を深めることで、いざというときにも冷静に対応できるようになります。
スマホやLINEの内容を拒否することはできますか?
スマホやLINEのデータ提示を完全に拒否することは原則としてできません。税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があり、任意調査であっても調査官には「質問検査権」、納税者には「受忍義務」があります。
これは、税務調査に関係のある範囲については、調査官の質問や資料の提示要求に協力する義務があることを意味します。ただし、調査官に見せるのはあくまで業務に関連するデータのみであり、プライベートな内容まで見せる必要はありません。提示する範囲を自ら選び、調査官にスマホの操作を委ねないことが重要です。
税務調査でスマホを提出することになった場合、どのくらいで返却される?
原則として、スマホをまるごと預けるような場面はほとんどありません。任意調査の場合、調査官に必要なデータをその場で確認・提示するか、プリントアウトやスクリーンショットなどで提出することが一般的です。
しかし、強制調査が行われた場合は、裁判所の令状に基づきスマホが押収されることもあります。この場合、押収物の返却時期は調査の進行状況や証拠の確認内容によって異なり、数日から数週間、場合によってはさらに長期間を要することもあります。
とはいえ、こうしたケースは極めてまれであり、通常の任意調査でスマホが回収されることはほぼありません。不安がある場合は、税理士を通じて確認・対応するのが安心です。
まとめ
税務調査では帳簿や書類が中心に確認されますが、情報が不十分であった場合にはスマホやLINEのデータも調査対象となる可能性があります。調査官には質問検査権が、納税者には受忍義務があるため、業務に関係するデータの提示は原則として拒否できません。
ただし、プライベートな情報まで開示する義務はなくスマホの操作も自分で行い、提示は必要最小限にとどめることが基本です。業務とプライベートのスマホを分ける、データを整理しておくことでスムーズに税務調査に対応することができます。税理士法人GNsでは、税務調査対応の実績が豊富で、事前の相談から調査当日の立ち会いまで、経営者に寄り添ったサポートを提供しています。
「税務調査が入ることになったがどこまで調査されるのか不安…」という方は、ぜひ一度ご相談ください。