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税務調査で書類がない時はどうする?帳簿なしや領収書紛失時の対応策

税務 調査 書類 が ない

税務調査の通知が届いたとき、「帳簿がない」「領収書を紛失してしまった」と気づいて慌てた経験はありませんか?個人事業主やフリーランス、中小企業の経営者にとって、税務調査は非常にプレッシャーのかかる出来事です。

特に書類の不備は、調査の行方を大きく左右するリスク要因となります。この記事では、書類がないことでどんな問題が発生するのかを正確に理解したうえで、現実的な対処法や税理士への相談タイミング、将来の備えまでを丁寧に解説します。

状況が厳しく感じられても、冷静に対応すればリスクを軽減することは可能です。正しい知識と準備で、調査を乗り越える体制を整えていきましょう。

税務調査で書類がないと何が起こるのか

税務調査では、帳簿や領収書といった「証拠資料」が重視されます。これらが不足していると、支出の正当性を証明できず、経費否認や追徴課税の対象となることがあります。

ここでは、税務調査で確認される書類の役割と、書類がない場合に起こる可能性のあるトラブルを解説します。

税務調査で確認される主な書類と役割

税務調査では、帳簿や証憑を通じて、申告内容の正確性が検証されます。調査官は、支出や収入の根拠となる以下のような書類を確認します。

調査で確認される主な書類

  • 総勘定元帳、現金出納帳、売上帳などの帳簿類
  • 領収書、請求書、納品書、契約書などの証憑
  • 銀行通帳、クレジットカード明細
  • インボイス(適格請求書)
  • 経費や売上に関する補足資料(メール、議事録など)

これらの資料が整っていれば、調査はスムーズに終わることが多く、余計な疑いを持たれることも避けられます。

帳簿や領収書がない場合に指摘されるリスク

帳簿や領収書が提出できないと、支出の妥当性を説明できず、調査官から次のような指摘を受けるリスクがあります。

  • 経費が正当なものと認められない(経費否認)
  • 推計課税が適用され、実際より高い税額で課税される
  • 帳簿不備による青色申告の取り消し

帳簿書類がなければ、売上や利益をどう計算したのかが説明できず、「推計課税」という不利な形での課税につながる可能性があります。

重加算税が課される可能性

調査官が「故意に書類を破棄した」と判断した場合、通常の加算税に代わって、重加算税が課されることがあります。

重加算税が課されやすい状況

  • 売上除外や架空経費の計上が確認された場合
  • 二重帳簿や虚偽説明が発覚した場合
  • 書類破棄が長期にわたって放置されていた場合

悪質と見なされれば、税務調査の結果がより厳しくなり、追徴税額が大幅に増えることがあります。

青色申告の取り消しや推計課税のリスク

青色申告は、正確な帳簿と証憑の整備が条件です。これが満たされていない場合、青色申告承認が取り消される可能性があります。

青色申告取り消しの影響

  • 青色申告控除など特別控除が使えなくなる
  • 翌年以降の赤字繰越ができなくなる
  • 青色専従者の給与を経費計上できなくなる

また、資料が不足している場合は、税務署が一定の基準をもとに収入や経費を算出する「推計課税」が行われ、実態以上の納税義務を負うことにもつながります。

税務調査で書類がないときの具体的な対応方法

書類や帳簿が揃っていない状態で税務調査に臨むのは不安が大きいものですが、適切な対応を取ることでダメージを最小限に抑えることが可能です。ここでは、帳簿や領収書が手元にない場合の現実的な対処法を紹介します。

取引先に再発行依頼をする

まず最初に検討すべきなのは、取引先に対する領収書や請求書の再発行依頼です。多くの事業者では過去の取引情報を一定期間保存しており、正式な書類を再発行してくれるケースもあります。

再発行依頼時のポイント

  • 取引日、金額、取引内容を明確に伝える
  • 書類の形式(領収書・請求書など)を指定する
  • メールや電話の記録も控えておく

再発行された書類は、調査時に正式な証憑として提示できるため、できる限り早めに依頼しておくことが重要です。

請求書や銀行明細など代替書類を準備する

領収書や帳簿がない場合でも、納品書・銀行明細・クレジットカードの利用明細など他の証拠資料で支出を裏付けることが可能です。

代替書類として有効なもの

  • 銀行の入出金履歴(通帳・ネットバンキング画面)
  • 納品書(発行元・金額・日付の記載があるもの)
  • クレジットカード明細
  • メールの送受信履歴(取引確認ができるもの)

これらの書類を時系列で整理し、帳簿代わりとして提出することで、調査官に対して支出の正当性を証明しやすくなります。

出金伝票を作成して支出の根拠を残す

現金支出に関しては、出金伝票を事業者自ら作成することで、領収書がない場合の代替手段として活用できます。ただし、信頼性が低いため、他の証拠と併用することが求められます。

出金伝票に記載すべき内容

  • 支出日、支払先、金額
  • 支出の目的と内容
  • 担当者の署名または社印

出金伝票だけでは不十分な場合も多いため、可能であれば他の資料・業務日報などと合わせて証明することが望ましいです。

今ある資料を整理して可能な限り整合性を示す

たとえ書類が一部しか残っていなくても、今手元にある資料を時系列や内容別に整理して、申告内容との整合性をアピールすることが大切です。

整理すべき資料の例

  • 領収書の一部
  • 会計ソフトの帳簿データ
  • 集計表で作成した取引記録
  • メール、チャット、日報などの記録

これらを調査対象期間ごとにまとめ、支出や収入の流れを説明できるようにしておくことで、調査官からの心証が大きく変わる可能性があります。

税務調査当日に備えて準備すべきこと

税務調査の通知を受けたら、当日までに何を準備しておくべきかを把握することが大切です。書類が不足している場合でも、落ち着いて整理と対応を行えば、調査官に誠実な姿勢を伝えることができ、調査が円滑に進む可能性が高まります

ここでは、当日までに準備すべき基本的な流れと、当日のポイントを解説します。

調査通知を受け取ったら最初に確認するポイント

税務調査は原則として事前通知が行われます。通知内容には調査の範囲や日程などの重要な情報が含まれていますので、まずは冷静に確認しましょう。

通知内容でチェックすべき事項

  • 調査対象期間(通常は3年分)
  • 調査対象税目(所得税、法人税、消費税など)
  • 調査の場所(自社か税務署)
  • 担当調査官の氏名と連絡先
  • 持参・準備が求められる資料

日程調整が難しい場合は、速やかに担当者に連絡を入れて変更依頼をすることも可能です。

事前に帳簿や証憑を整理する方法

調査日までの期間で、可能な限り書類やデータを整理しておくことが重要です。全てが揃っていなくても、支出や売上の流れを説明できる資料があれば調査官の理解を得やすくなります。

整理しておくべき書類

  • 帳簿(現金出納帳、総勘定元帳など)
  • 残っている領収書、請求書、納品書、契約書
  • 銀行通帳やカード明細のコピー
  • Excelなどの記録データ
  • 代替資料(メール、出金伝票、メモなど)

時系列で並べる、取引先ごとに分けるなど、見やすく整理する工夫があると、調査官の作業もスムーズになります。

当日の対応姿勢と調査官とのやり取りの注意点

調査官は主に申告内容と実態が一致しているかを確認するのが目的です。必要以上に緊張したり、対立的な姿勢を取るのは逆効果となります。

当日の心構え

  • 不明なことは曖昧にせず「確認します」と回答
  • 嘘やごまかしをしない
  • 質問には端的に、資料で裏付けしながら説明する
  • 調査官に対して協力的な態度を保つ

穏やかで誠実な対応を続けることで、調査官の信頼を得て調査期間が短縮されることもあります

追加資料を求められた場合の柔軟な対応

調査中に「この取引に関する資料が他にもあれば提出してほしい」と依頼されることがあります。そうした場面では、できる限り協力的な姿勢で対応することが重要です

対応のポイント

  • 期日を確認し、間に合うように準備する
  • 不明な内容は税理士にも相談する
  • 提出できない事情がある場合は、理由を明確に伝える

資料が揃っていない状況であっても、説明と代替資料を組み合わせることで調査官は柔軟に判断してくれる場合もあります

税理士に相談すべきタイミングとメリット

帳簿や書類が不十分な状態で税務調査を迎える場合、税理士のサポートを受けるかどうかで調査結果に大きな差が出る可能性があります。特にリスクが高いと感じたときや、対応に不安がある場合には、税理士の専門的な視点が有効です。

ここでは、税理士に相談すべきタイミングと、相談によって得られるメリットを紹介します。

税務調査に強い税理士に相談するメリット

税務調査に詳しい税理士であれば、調査官がどこを重視するかを把握しており、調査対象になりやすい箇所を事前に洗い出し、リスクを最小限に抑えることが可能です。

相談によって得られるメリット

  • 不足している資料の代替策を提案してもらえる
  • 修正申告や説明文書の作成を代行してもらえる
  • 税法に則った適正な処理や調査対応を行うことで、重加算税などを回避できる
  • 調査官との対応方針を一緒に考えてもらえる

一人で悩むよりも、経験豊富な税理士の知見を活用することで、効果的な判断がしやすくなります

税理士が立ち会うことで得られる安心感

税務調査当日に税理士が立ち会うことには、大きな安心感と実務的な効果があります。経験豊富な税理士は調査官とのやり取りに慣れており、トラブルの火種を早期に察知し、適切に対応してくれます

立ち会いによる利点

  • 質問への受け答えを代理またはサポートしてもらえる
  • 過去の申告内容の説明を正確に行ってもらえる
  • 不利な印象を与えないよう調整してもらえる
  • 調査の終了条件や処分内容について交渉してもらえる

不安な気持ちを抱えたまま一人で対応するよりも、税理士と一緒に臨むことで精神的にも実務的にも安心できます

調査後の申告修正や再整備への支援

税務調査の結果、何らかの指摘を受けた場合、修正申告が必要になることがあります。また、帳簿の整備が不十分な場合には、今後の体制づくりも含めてサポートしてもらうことができます

調査後に受けられるサポート

  • 修正申告書の作成と税額試算
  • 追徴税額や加算税・延滞税の納付方法のアドバイス
  • 青色申告承認の維持に向けた帳簿再整備
  • 次回調査に備えた改善提案

税務調査をきっかけに、経理や税務の体制を見直すことで、今後の不安を解消し、安定した事業運営につなげることができます

税務調査に強い税理士を探している方は税理士法人GNsへ、ぜひ相談ください。

GNsの特徴

  • 調査対応経験が豊富な専門チームが在籍
  • 書類不備や帳簿の未整備にも柔軟に対応
  • 修正申告のための支援も万全
  • 中小事業者・個人事業主へのサポート実績多数

帳簿や領収書が不十分でも、「今あるものをどう活かすか」を一緒に考え、税務調査の不安を根本から取り除くことができます

将来の税務調査に備えた日常的な書類管理のコツ

税務調査に慌てず対応するためには、日々の書類管理が最も重要です。書類が整っていれば、調査の対象になったとしても短期間で終わる可能性があります。ここでは、調査に強い体制を築くための具体的な管理方法を紹介します。

デジタル化とクラウド保存で資料を守る

紙の書類は劣化や紛失のリスクがあるため、デジタル化とクラウド保存によって安全性と管理効率を高めるのが効果的です。

導入すべき管理手段

  • 領収書や請求書をスマホアプリでスキャン保存
  • Google DriveやDropboxなどのクラウドにバックアップ
  • 会計ソフトと連携し、デジタルデータを帳簿に連携
  • ファイル名に「日付+取引先+金額」などを入れて検索性を確保

これにより、紛失や災害リスクを防ぎつつ、調査時にも迅速に資料を提示できる体制を築けます

定期的なバックアップと整理習慣

資料の保存だけでなく、定期的な見直しと整理の習慣を持つことも重要です。デジタル・紙の両方に対応する管理体制を整えることで、調査に強い事業運営が可能になります。

整理のコツ

  • 月に1回、書類のスキャン・分類・保存をルーティン化
  • 帳簿と証憑の照合を定期的に実施
  • ファイルは年度・取引先・税目ごとに分類する
  • 紙の書類はスキャン後も一定期間保管しておく

習慣化することで、調査通知が来ても慌てず対応できる自信がつきます

個人用と事業用の支出を区分して記録する

支出の区分が曖昧なまま帳簿をつけていると、調査時に経費が私的な支出と見なされ、経費否認や重加算税の原因になります。そのため、日頃から支出の線引きを明確にしておくことが重要です。

区分管理のポイント

  • 事業専用の口座とクレジットカードを用意する
  • 経費処理時に「業務に関係する内容」をメモしておく
  • 振替伝票や摘要欄に用途を具体的に記載する
  • 家事按分が必要な支出は計算根拠を残す

帳簿を見ただけで使途が明確に分かる状態にしておくことで、調査時の説明がスムーズになります。

特に気を付けなければならないポイントは、法人の代表者などが私的な支出を法人の経費として計上・申告することです。私的な支出として否認された場合、以下のように同時に複数の追徴課税が生じるリスクがあるため、私的な支出を法人経費に入れることはやめましょう。

  • 法人の経費にできず、法人税の追徴課税が生じる
  • 代表者などへの賞与と認定され、源泉所得税の追徴課税が生じる
  • 消費税の仕入税額控除が認められず、消費税の追徴課税が生じる
  • 重加算税のリスク

インボイス制度や電子帳簿保存法への対応

2023年から始まったインボイス制度と、強化される電子帳簿保存法により、適正な証憑管理と電子保存が求められるようになりました

今後の対応ポイント

  • 仕入先が適格請求書発行事業者か確認する
  • 適格請求書の保存(紙・PDFいずれも可)を徹底する
  • 電子データとして保存する場合は電子帳簿保存法の要件(タイムスタンプ、検索性など)を満たすソフトを活用
  • 少額取引も含めて、帳簿と証憑の整合性を保つ

これらの制度に対応できていれば、調査時にも信頼性の高い管理体制として認識され、調査期間や指摘事項が少なくなる可能性が高まります

まとめ

税務調査において帳簿や書類が提出できない場合、経費否認や推計課税、青色申告の取り消し、重加算税のリスクなど、重大な不利益を被る可能性があります。

しかし、書類がないからといってすぐに「終わり」と考える必要はありません。再発行依頼や代替資料の準備、口座明細やカード明細の活用など、できる対応策は数多くあります

また、税務調査に慣れていない中小企業、個人事業主やフリーランスにとって、税理士法人GNsのような専門家である税理士のサポートは非常に心強い存在です。事前相談や立ち会い、調査後の修正申告など、幅広い支援を受けることで、精神的にも実務的にも余裕を持った対応が可能になります。

日々の書類管理やデジタル保存、インボイス制度への対応などを整えておくことで、将来の調査に対する不安を解消し、安心して事業に専念できる環境をつくることができます。万が一のときも、冷静な準備と対応で乗り越えましょう。