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「税務調査がまた来たらどうしよう」一度税務調査を経験した事業者の多くが、次の調査の可能性に不安を感じます。特に、「2年連続で調査された」「短期間で再調査があった」という声を聞くと、自分のところもそうなるのではと心配になる方も多いのではないでしょうか。
税務調査が行われるのはランダムではなく、申告内容や業種、過去の指摘への対応など明確な理由がある場合がほとんどです。この記事では、税務調査が再び行われる理由や頻度、再調査の条件、そして2回目の調査に備えて今できる対策までを分かりやすく解説します。
再調査を恐れるのではなく、適切に備えることが、安心経営への第一歩です。
税務調査の割合や時期・頻度
税務調査がどの程度の確率で行われているのか、またいつ頃入りやすいのかを知っておくことは、無駄に不安を感じないためにも重要です。ここでは、調査の実施割合や時期、2年連続調査の可能性について具体的に見ていきましょう。
個人事業主と法人に入る税務調査の割合
国税庁の発表によると、税務調査が実施される割合は次のようになっています。
区分 | 実地調査の割合(年間) |
個人事業主 | 約1%前後 |
中小法人 | 約3%〜5% |
特定業種・高リスク法人 | 約10%以上 |
これを見れば分かる通り、すべての事業者が毎年調査を受けるわけではなく、明確な選定基準に基づいて実施されています。
2年連続で調査対象になる可能性
2回目の税務調査が数年以内に来ることは十分あり得ますが、2年連続で調査が入る確率は非常に低いといえます。ただし、次のようなケースでは、2年連続や3年以内の再調査も珍しくありません。
- 前回の調査で重大な指摘があった
- 修正申告や追徴課税が発生した
- 申告内容に再度不審点がある
- 調査後の改善が不十分と判断された
つまり、2回目の調査までの間隔が短いのは単なる「偶然」ではなく、前回の結果に起因しているケースが多いのです。
税務調査の時期や間隔に明確な基準はない
税務調査には「このタイミングで必ず入る」という決まりは存在しませんが、多くは確定申告や3月決算法人の申告期が終わった後の6月~翌年2月頃に実施されます。調査間隔についても事業のリスクや過去の対応によって異なります。
目安としては以下の通りです。
- 通常:5年に1回程度(リスクの低い法人や個人事業主)
- 指摘事項があった場合:3年以内に再調査
- 悪質な事例:翌年に再調査や強制調査
税務署は情報をもとに優先順位を付けて調査先を決めているため、自分がどの位置にいるのかを意識することが重要です。
再調査や高頻度の税務調査が行われる理由

税務調査が短期間で複数回行われる場合には、必ずといっていいほど、調査を受ける側に何らかの「理由」や「背景」があります。ここでは、法律上の根拠とともに、税務署が再調査を決定する主なパターンを整理していきます。
国税通則法に基づく再調査の条件
税務調査には「原則として一事業年度につき1回」という考え方がありますが、これはあくまで任意調査の話であり、再調査が禁止されているわけではありません。国税通則法では、「新たに得られた情報に照らし非違があると認めるとき」は合法的に再調査が可能とされています。
つまり、「一度調査を受けたからもう終わり」ではなく、新たな情報から間違いがあると認められる場合には、税務署は再度調査に入ることができます。
新しい情報や証拠が見つかった場合
たとえ前回の調査が終わっていても、その後に他の納税者からの情報提供や、関係会社の調査などを通じて、あなたに関連する不正の可能性が発覚した場合には、再調査が行われることがあります。
よくあるきっかけ:
- 取引先の調査から不自然な請求書が見つかった
- 他者との資金移動の記録から関連が疑われた
- 税務署内の内部資料から新たなリスクが浮上
調査は単独ではなく、複数の調査や資料から総合的に判断されて実施されるのが実態です。
前回調査の指摘事項が改善されていない場合
最もよくある頻度の多い調査のパターンは、前回の調査で指摘された内容が改善されていない、または同様の問題が繰り返されているケースです。
改善が不十分だと見なされる状況:
- 同じ経費項目に計上ミスが再発している
- 現金管理や売上計上方法が相変わらず曖昧
- 証憑書類の不備が放置されたままになっている
税務署は調査後も申告内容をチェックしています。前回の指摘にどう対応したかが、次の調査の有無に大きく関係するのです。
税務調査が入りやすい業種や特徴
税務調査はすべての事業者に対して一律に行われるわけではありません。税務署は「申告内容に不自然な点がある」「業種的に不正が起きやすい」と判断された事業者を優先的に調査対象とします。ここでは、特に調査が入りやすい業種や申告傾向について解説します。
現金商売が中心の業種は調査対象になりやすい
現金取引が多い業種は、売上除外や過少申告のリスクが高いとされ、税務署の重点調査対象となる傾向があります。
該当しやすい業種例
- 飲食店、水商売、美容室、理容室
- 小売業(現金精算が主な業態)
- 整体・マッサージなどのサービス業
- 建設業や個人請負(下請け業者含む)
これらの業種では、日々の売上管理が曖昧になりやすく、領収書や記帳が追いついていないケースが多いため、実地調査が行われやすいのが特徴です。
売上が急増している事業や無申告者のリスク
前年に比べて売上が急激に伸びている場合や、帳簿上の利益率が業界平均とかけ離れている場合も、調査の対象として選ばれやすくなります。
特にリスクが高い状況
- 数年で売上が数倍に増えている
- 経費の比率が異常に高く、利益が極端に低い
- 無申告が数年にわたっている
これらはすべて「調査すべきサイン」として税務署が監視しているポイントです。急成長している事業者は、利益だけでなく記帳と証憑管理も並行して強化すべきです。
過去に申告漏れや不正が多かった業種
国税庁は毎年「税務調査結果の概要」を公表しており、申告漏れや脱税の多かった業種も明らかにされています。そのため、過去に不正事例が多かった業界では、引き続き調査が集中する傾向があります。
過去に調査件数・追徴課税が多かった業種
業種 | 指摘の多い内容 |
建設・土木業 | 外注費の仮装計上、未収金の除外 |
飲食業 | 売上除外、現金管理の不備 |
医療・整体・美容系 | 売上申告漏れ、領収書未発行 |
IT・フリーランス系 | 経費過大計上、外注費の水増し |
業界全体としての傾向がある場合、自社がしっかりしていても「同業種だから」という理由で調査対象に選ばれることもあります。
2回目の税務調査で注意すべきポイント

一度目の税務調査を経て、再度の調査が入った場合には、税務署側が「前回の指摘に対する改善状況」や「新たな問題の有無」に注目している可能性が非常に高いです。
ここでは、2回目の税務調査で見られやすいポイントと、調査官に好印象を与えるために心がけたい対応について解説します。
前回調査での指摘を改善しているかを示す
税務署は、前回調査の経過や結果の記録を残しており、「過去に何を指摘したか」「その指摘がどう対応されているか」を必ず確認します。2回目の調査では、前回の指摘事項が繰り返されていないかを厳しく見られるため、改善履歴や対策の説明ができるように準備しておくことが重要です。
改善していることを示すための対応
- 指摘された帳簿の不備を修正し、記帳ルールを明確化
- 経費の根拠となる証憑を整理し、再提出できるように保管
- 税理士などの専門家と連携して運用ルールを見直した証拠を残す
前回の調査後に対策を講じた事実を示すことが、調査官の信頼につながります。
曖昧な説明や虚偽申告はしない
調査中に「記憶が曖昧で説明できない」「事実を隠したい」という気持ちから、適当な回答をしてしまうと、その場しのぎの発言が後々のリスクにつながります。
注意したいポイント
- 「分からないことは分からない」と正直に伝える
- 記録や書類に基づいて説明する
- 不明点があれば、その場で無理に答えず後日提出とする
- 嘘やごまかしは、信用を大きく損なう原因になる
税務署は説明の一貫性や論理性を重視しています。言い逃れよりも正確な記録と誠実な態度が調査での信頼につながります。
次回調査に向けて今できる対策
2回目の税務調査を避ける、またはスムーズに乗り切るためには、日常的な会計処理と証憑管理を徹底することが何よりの対策です。調査が終わったからといって安心せず、次に備える意識を持って記録・保存・体制を整えておくことが、経営上のリスクを減らす鍵となります。
事業用と個人用の取引を分けて記録する
税務調査で最も多い指摘の一つが、個人と事業のお金の混同による申告ミスや誤解です。プライベートとビジネスの口座やカードを分けるだけでなく、取引の記録にも線引きをしておく必要があります。
実践すべき対応
- 銀行口座やクレジットカードは「事業用」と「個人用」を完全に分離
- 帳簿上も取引ごとに事業性の有無を明記
- 家族との取引は理由や金額、日付を記録に残す
- 事業に使った個人支出は、立替払いの形式で精算処理
こうした管理ができていれば、税務署に「説明できる」体制として高評価を得られます。
領収書や証憑書類を正しく保管する
証憑の保管は、調査で「経費の正当性」を裏付けるために欠かせません。金額の大小にかかわらず、すべての経費に根拠となる書類を揃えておくことが重要です。
保管時のチェックポイント
- 領収書や請求書には取引日・金額・取引先名が明記されているか
- スキャナ保存する場合は電子帳簿保存法の要件を満たしているか
- 経費の支出理由をメモや経費精算書で補足しているか
- 支出と帳簿の仕訳が一致しているか定期的に確認
紙でも電子でも、すぐに提示できる形で7年間は保管するのが基本です。
不安があれば税理士に早めに相談する
税務調査に関する不安や、申告や経理の改善に自信がない場合には、早い段階で税理士に相談することでトラブルを未然に防ぐことができます。
税理士法人GNsでは、以下のようなサポートを提供しています。
- 税務調査を見据えた帳簿・証憑管理のアドバイス
- 前回の指摘内容の改善状況をチェック
- 不安な経費処理や資金管理への具体的な対応策を提案
- 税務署からの照会や調査への立ち会い対応も可能
実地調査を経験した後こそ、継続的に正しい運用ができているかどうかが問われます。「また調査が来るかも」と不安に感じたときは、プロの力を借りて体制を整えておきましょう。
まとめ

2回目の税務調査がに入るケースは決して珍しいことではなく、前回の調査結果や申告内容の不備、業種特有のリスクなどが重なることで2回目の調査が行われる可能性は十分にあります。
特に、現金商売や売上急増、過去に申告漏れがあった場合は調査対象として優先されやすくなります。
重要なのは、2回目の調査を「運が悪かった」と受け止めるのではなく、原因を正しく理解し、改善・対策を積み重ねることです。
事業と個人のお金をしっかり分け、証憑をきちんと保存し、記録に基づいた説明ができる体制を整えておけば、税務署との対応もスムーズになります。次回の税務調査に怯えるのではなく、今のうちに準備を整えておきましょう。