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ある日突然、税務署から電話がかかってきた――そんな経験に、驚きや不安を感じる方は少なくありません。「何か間違った申告をしてしまったのか」「税務調査対象になったのでは」と、頭が真っ白になることもあるでしょう。
この記事では、税務署からの電話がどのような目的でかかってくるのかを明確にし、冷静に対応するためのポイントを徹底解説します。
また、税務調査に関係する可能性がある場合の対応方法や、日程調整、資料準備のポイント、NG行動、税理士への相談のタイミングまで詳しく紹介します。読後には、万一の連絡にも慌てず、落ち着いて行動できる自信が持てるはずです。
税務署から電話がかかってくる主な理由
税務署からの電話と聞くと、即座に「税務調査だ!」と身構えてしまうかもしれませんが、実はすべてが調査目的というわけではありません。確認連絡や軽微な指摘である場合も多いため、まずは冷静に、電話の趣旨を見極めることが大切です。
ここでは、税務署からの電話がかかってくる代表的な理由を紹介します。
確定申告内容の確認や軽微な修正依頼のケース
よくあるケースとしては、確定申告書に関するちょっとした確認や、不備の指摘です(税務調査ではありません)。たとえば以下のような内容です。
- 所得金額の計算方法にミスがある、記載もれがある
- 医療費控除や住宅ローン控除に関して計算ミスがある
- 添付書類の一部が不足している
このような場合、いきなり税務調査に発展するわけではなく、確認レベルの電話であることが多いため、落ち着いて対応すれば問題ありません。
また、このような確認の連絡を受けて修正申告をする場合には、原則として加算税が発生しません。
税務調査の事前通知としての連絡
国税通則法第74条の9に基づき、税務調査を実施する際には、原則として税務署側に事前通知が義務付けられています。原則として電話による口頭連絡です。
通知の目的は以下の通りです。
- 税務調査を実施する旨
- 税務調査の日時・場所の確認
- 対象期間や対象税目の説明
- 担当調査官の氏名や連絡先の伝達
- 必要書類
この場合は調査対応の準備をすぐに始める必要があります。
取引先への反面調査や情報確認の場合
税務署が他の事業者を調査している中で、あなたの法人や個人の情報が関係先として浮上した場合、反面調査の一環で電話での口頭確認や、書面での確認が来ることがあります。
例
- 請求書の受領先や発行先として名前が出ている
- 現金取引が多く、支払の実態を確認したい
- 取引内容の裏付けとして、客観的な情報が必要
このような電話の場合、あなたが調査対象ではないものの、情報提供を求められています。事実を冷静に答えれば問題はありません。
税務署からの電話が本物か詐欺かを見分ける方法
近年、税務署や国税を名乗る詐欺電話やフィッシング詐欺が多発しています。特に「還付金があります」「延滞税の支払いが必要です」といった言葉で個人情報や振込を求める手口が横行しており、本物の税務署からの連絡と見分けがつかず混乱するケースも増えています。
ここでは、本物の税務署からの電話と詐欺電話を見分けるための確認ポイントを紹介します。
名乗り方・電話番号・用件内容を冷静に確認する
本物の税務署から電話がある場合、次のような特徴があります。
- 最初に「〇〇税務署の〇〇です」と名乗る
- 用件は具体的かつ簡潔(申告内容や調査日程など)
- 電話番号は市外局番付きの固定電話
怪しいと思ったときのチェックリスト
- 担当者の名前と所属部署をメモする
- どの税目(所得税・法人税など)や対象期間についての連絡か確認
- 折り返し可能かどうかを確認し、焦って対応しない
税務署の職員であれば、折り返し対応にも冷静に応じます。電話を切る前に、「本当に税務署からの電話か?」と冷静に疑う視点が大切です。
還付金や個人情報を求める電話は詐欺の可能性あり
税務署が電話で還付金の手続きや口座番号、暗証番号を尋ねることは絶対にありません。以下のようなセリフがあれば、詐欺を強く疑うべきです。
- 「還付金があるのでATMで操作してください」
- 「未納税があるのでコンビニで支払ってください」
- 「マイナンバーや銀行口座を教えてください」
このような場合、即座に電話を切り、税務署の公式窓口に確認するのが鉄則です。
不審な場合は税務署公式番号に折り返して確認する
少しでも不審に思ったら、その場で対応せず一度電話を切りましょう。その後、税務署の公式サイトに記載された代表番号に自分でかけ直すことが最も安全な方法です。
折り返し確認の手順
- 担当者名・部署・用件をメモ
- 税務署の公式Webサイトで所在地・番号を確認
- 代表番号に電話し、「このような連絡があった」と伝える
詐欺だった場合は、国税庁や警察への通報も検討しましょう。冷静に対応することで、被害を未然に防げます。
税務調査の電話が来たときの正しい対応手順

税務署からの電話が「税務調査の事前通知」であった場合、焦らずに冷静かつ丁寧な対応を心がけることが重要です。正しい対応フローを知っておくことが安心につながります。
折り返しの前に要件・担当者名・連絡先を必ずメモする
電話を受けた際には、まず以下の情報を必ずメモしておきましょう。
- 税務署名と所在地(例:新宿税務署)
- 担当者の名前と所属(法人課税部門・個人課税部門など)
- 対象となる税目と調査対象期間
- 連絡先電話番号と受付時間
- 連絡の目的(調査通知か、確認連絡か)
この情報を整理した上で、「一度確認して折り返します」と伝え、即答を避けるのがベストな対応です。不明点がある場合は、税務署または税理士に相談しましょう。
日程調整の際は税理士同席を前提に相談する
調査日程の相談を受けた際は、税理士の同席を前提にスケジュールを調整しましょう。税務署も基本的にはこの要望を受け入れてくれます。
対応のポイント
- 「顧問税理士と日程を調整してから折り返します」と伝える
- 顧問税理士がいない場合は、事前に税理士へ依頼を検討する
税理士の立ち会いがあることで、説明内容の正確性が増し、誤った対応や誤解を避けられます。
その場で内容を説明しようとせず冷静に対応する
調査対象の税目や帳簿に関して、電話口でいきなり「これはどういう取引ですか?」と尋ねられることが稀にありますが、その場で詳しく説明するのは避けるべきです。
避けるべき理由
- 記憶が曖昧なまま答えると誤解や不信感を招く
- 無意識に不利な発言をしてしまう恐れがある
- 記録が残るため、後の調査内容に影響する可能性がある
「調査時に資料とともにご説明します」と伝え、曖昧な返答を避けて誠実な姿勢を示すことが肝要です。
税務調査前に準備すべき資料と心構え
税務署からの電話で税務調査の実施が決まったら、調査当日までに必要な書類の準備と心構えを整えることが極めて重要です。事前の準備次第で、調査の進行がスムーズになり、指摘や修正も最小限に抑えられる可能性があります。
ここでは、調査に備えて用意すべき代表的な資料と心構えを紹介します。
帳簿・領収書・契約書などの証憑を整理しておく
税務調査では、事業に関連する取引を証明する書類(証憑類)の提示を求められます。形式的にそろっていても、整理されていないと調査がスムーズに進行できないため、整然とした状態で保管・提出できるようにしておきましょう。
主な準備資料
- 総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳
- 領収書、請求書、納品書などの原本
- 契約書や業務委託書、注文書など
- 銀行通帳のコピーやインターネットバンキングの履歴
- クレジットカード明細など
紙資料に加えて、データ保存形式の証憑も提出対象になる場合があるため、クラウドやExcelデータも確認しておくと安心です。
経費や所得の説明ができるようデータを確認する
税務調査では、経費の使途や所得の内訳に関する説明が必要です。「何に使ったか」「誰との取引か」など、スムーズに説明できるよう準備しておきましょう。
チェックポイントの例
- 按分している経費(自宅兼事務所、車両費など)の根拠
- 交際費や接待費の相手先と目的
- 現金取引の記録と裏付け資料の有無
税務署は、「説明できない経費=否認対象」と見なすおそれがあるため、事業関連性を明確にしておくことが重要です。
過去の修正申告や指摘事項の有無を再確認する
過去に税務署から修正申告を求められたことがある場合や、自主的に修正した経緯がある場合は、その履歴と対応内容を再確認しておきましょう。
確認すべき資料
- 修正申告書の写し
- 税務署とのやり取り記録(通知書、電話メモなど)
- 税理士からの報告書や改善提案書
過去の経緯を把握していることは、信頼感を得るポイントにもなります。逆に「記憶にありません」といった曖昧な返答は避けましょう。
税務署からの電話を無視・放置した場合のリスク

「ちょっと怖いから…」「今は忙しいから後で折り返そう」 そう思って税務署からの電話を無視・放置してしまうのは非常に危険です。調査連絡や申告内容の確認であっても、応答がなければ税務署は「悪質」とみなす可能性があります。
ここでは、電話を無視した場合に生じる具体的なリスクを整理して解説します。
税務調査の連絡を無視し続けた場合、更正・決定処分をされることも
税務署からの調査通知を無視し続けた場合、税務調査そのものを拒否したとみなされ、税務署側の判断で「更正・決定処分」が下される可能性があります。
更正・決定処分とは
| 項目 | 内容 |
| 対象 | 法人税、所得税、消費税など |
| 処分内容 | 税務署が強制的に修正課税額を決定 |
| 基準 | 過去の申告、資料提出の有無、他社との比較等 |
| 影響 | 高額な追徴税、延滞税、加算税が発生する場合も |
このように、納税者の反論や主張を聞かずに一方的に処分される可能性があるため、無視は絶対に避けるべき対応です。
連絡拒否で印象を悪化させると交渉が不利になる
税務署の連絡を無視・拒否することで、以下のような疑念を与えてしまいます。
- 何か隠し事があるのでは?と思われる
- 調査に非協力的=悪質な納税者
- 誠意が感じられない=加重処分も検討
その結果、調査が厳しくなる、細かく追及される、過去の資料まで遡られるなど、不利な展開になりかねません。
早期に対応すれば日程調整や説明の猶予が得られる
一方で、税務署からの電話に早期対応をすれば、柔軟な調整や猶予の相談が可能になります。税務署もいきなり押しかけたり、即断即決を迫るわけではありません。
早期対応のメリット
| 対応内容 | 得られるメリット |
| すぐに折り返す | 信頼感・誠実さを示せる |
| 税理士同席の調整を申し出る | 時間的猶予が得られる |
| 資料準備の猶予を相談する | 冷静な対応が可能になる |
税務署とのやり取りは、「素早く・正確に・誠実に」を心がけることが、リスクを最小限に抑える最大の防衛策となります。
税務署の電話対応でやってはいけないNG行動
税務署からの電話に驚いて、焦ったまま対応してしまうと、不用意な発言や行動で調査を不利にしてしまうリスクがあります。ここでは、電話対応で絶対に避けるべきNG行動を具体的に紹介します。冷静に対応するためにも、事前にNGパターンを知っておくことが重要です。
感情的に反論したり不正確な説明をする
税務署からの指摘に対して、つい感情的に反応してしまう方は少なくありません。しかし、感情的なやり取りは避け、冷静に対処するべきです。
避けるべき言動の例
| NG発言 | 理由 |
| 「そんなの聞いてない!」 | 通知や義務を知らなかったことは言い訳にならない |
| 「覚えてないけど、たぶん大丈夫です」 | 曖昧な説明は不信感につながる |
| 「前に別の人に聞いたから大丈夫」 | 担当者ごとに対応が違うとは限らない |
正しい情報は「資料で説明する」と伝え、感情的なやり取りは避けましょう。
その場で資料を送付したり謝罪を繰り返す
電話中に「今すぐ送ります」「すぐにお詫び文を書きます」などと、準備が整っていない状態で資料送付や謝罪を始めてしまうのはNGです。
その理由
- 間違った資料を送ってしまう可能性がある
- 余計な誤解を招き、後の修正が難しくなる
「必要な資料は確認して後日提出いたします」と伝え、正確さと冷静さを優先しましょう。
自己判断で税務調査を拒否する
「今忙しいから無理です」「そもそも調査に応じる義務はないでしょ?」といった、自己判断による拒否対応は非常に危険です。
税務調査は原則として、国税通則法に基づく法的な調査権限により実施されます。特に以下のような対応はNGです。
なお、税務調査は納税者側に受忍義務があるため拒否することができません。
| NG対応 | リスク |
| 電話を切る・無視する | 悪質とみなされる原因となることも |
| 調査を断ると主張する | 更正決定処分・強制調査に発展する恐れあり |
| 「税理士いないから無理」と言う | 税理士不在でも調査は進行する |
調査は拒否するものではなく、「どう対応するか」を考えるべき対象です。必要があれば、すぐに税理士に相談しましょう。
税務調査の電話がきたら税理士に相談すべき理由
税務署から「調査を行います」と電話が来たとき、まず最初にすべきことは税理士への相談です。税務の専門家と連携して対応することで、調査を有利に進められるだけでなく、無用なトラブルや過度な追徴課税の回避にもつながります。
ここでは、税理士に相談すべき具体的な理由とそのメリットを解説します。
調査官とのやり取りや日程調整を任せられる
税理士がいれば、税務署との窓口役を一任することが可能です。調査日程や質問内容の確認、事前通知への対応なども含めて、プロとして交渉や調整を行ってくれます。
税理士が行う主なサポート
- 調査官との連絡・日程調整
- 調査対象の税目・期間の確認
- 調査当日の立会いと受け答えの補助
とくに緊張しやすい経営者や、税務に不慣れな方にとっては、税理士の存在が大きな精神的支えにもなります。
不利な発言や誤解を防ぎ冷静に交渉できる
税務調査では、些細な発言や曖昧な説明が調査結果に大きな影響を与えることがあります。税理士がいれば、調査官に誤解を与えるような発言を事前に防止することができます。
サポートの具体例
| シーン | 税理士の役割 |
| 経費の使途を説明 | 法的根拠をもとに補足説明してくれる |
| 課税対象か不明な取引 | 類似事例や税法解釈で整理してくれる |
| 誤解を受けそうな発言 | その場で訂正・補足してくれる |
「言った・言わない」のリスクを減らし、論理的な説明ができることが、税理士の最大の強みです。
必要に応じて修正申告・準備書類のサポートも可能
調査の過程でミスが見つかった場合、税理士がいれば速やかに修正申告や必要書類の作成が可能です。個人で対応するよりも、ミスが少なく、調査官の信頼も得やすくなります。
税理士ができること
- 修正申告書や更正の請求書の作成・提出
- 証憑類の整理・精査・保管アドバイス
- 過去の申告内容との整合性の確認
- 今後の是正方針のアドバイス
特に調査後の是正対応を適切に行えば、スムーズに調査が終了することも期待できるため、専門家の力を借りることは非常に有効です。
税理士法人GNsは、税務調査対応のプロ集団です。
突然の調査連絡や修正申告の必要性が発生した際にも、豊富な実績と的確な対応力で、法人・個人事業主を徹底サポートしています。不安を抱える前に、まずは一度相談ください。
まとめ

税務署からの突然の電話は、多くの人にとってプレッシャーや不安を感じる出来事です。しかし、電話の目的が何かを冷静に判断し、正しい対応を取ることで、調査や確認連絡を有利に乗り切ることが可能です。
この記事では、税務署からの電話の主な目的や見分け方、対応の手順、準備すべき資料やNG行動、税理士との連携の重要性まで、実践的なポイントを解説しました。
重要なのは、「焦らず、誠実に、正確に対応すること」です。そして、税務調査や確認連絡が来たときこそ、税務に強い専門家との連携が最大の防御策になります。税務調査対応に特化した税理士法人GNsでは、調査連絡から実地調査対応、修正申告までしっかりサポートしています。ぜひお気軽にご相談ください。
